スーパーコンピューター
例の事業仕分けには賛否両論、というか、否の声の方がかなり大きく聞こえるような気もしますが、消極的賛成も含めた賛成側よりは反対側の方がより声を上げるでしょうから、実際のところはどちらの世論が優勢なのかは分かりにくいところです。
という話はともかく、270億円の「次世代スーパーコンピューター」関連の予算削減に関しては、私は強く賛成します。
私は一般論として、「科学技術や研究開発には投資すべき」という側の人間のつもりですが、「次世代スーパーコンピューター」はいけません。
「次世代スーパーコンピューター」が何かを、ある程度正確に理解している人は、どの位いるんでしょうか?
現在「スーパーコンピューター」と呼ばれているものは、20年程前の「スーパーコンピューター」の概念とは大きく異なります。簡単に言うなら、膨大な数の「普通のコンピューター」を接続して、それらに効率よく分業をさせて高い演算性能を得る、という考え方のコンピューターが現在の「スーパーコンピューター」の主流です。
本当に普通の、Webからでも買えるような、インテルプロセッサのサーバーを何千台何万台と繋げるんです(別のプロセッサーのこともあります。AMDとかIBM Cellとか)。それぞれのサーバーにはGPGPUと呼ばれる補助プロセッサが搭載されることもありますが、そのGPGPUはゲーム用パソコンのグラフィックスボードに乗っているものと基本的に同じです。
つまり、「スーパーコンピューター」のハードウェアは何ら特別なものではなく、汎用サーバーと汎用のプロセッサを膨大に使っているだけです。「スーパーコンピューター」を「スーパー」たらしめているのは、その膨大さと、「効率よく分業させる」ためのソフトウェアです。
おそらく、270億の予算の大部分は、普通のコンピューターを膨大に購入するために使われます。「効率よく分業させる」ための技術を馬鹿にするつもりはありませんが(実際、大変なことです)、予算の上ではそこに使われるのは微々たるものでしょう。
それが現在の「スーパーコンピューター」の実態です。そのようなアプローチ自体が悪いわけではありません。短期的に比較的低いコストで最大の結果を生むには、汎用品を大量に使うのは合理的なアプローチでしょう。
ただし、そのアプローチが、国が「次世代スーパーコンピューター」云々といって予算をつけるに値するかどうかは別問題です。大学や企業やその連合体が独自にやっても良いことです。
科学技術や研究開発に投資すると言うなら、本当の「次世代」の技術に投資して貰いたいと思います。NECや富士通や日立の中には、かつてのスーパーコンピューターの開発に携わった方々がまだいらっしゃるでしょう。採算が取れずに(かつ性能面でも不十分で)スーパーコンピューター開発から撤退したものの、捲土重来を期したい優秀なエンジニアはまだまだいると思います。
国はそういう所にこそ投資すべきでしょう。インテルなどの米国企業の技術をベースにした、汎用サーバーを大量に使うだけのスーパーコンピューターではなく、本当の「次世代」の技術開発に投資して、スーパーコンピューターの世界でのブレイクスルーを日本発の技術で果たすためなら、国は予算をつけるべきだと考えますが、汎用品を大量に購入するための予算なら、削っても構わないと思います。
予算の中身を変えて、本当の「次世代」のための研究開発に使うのなら、270億も使わなくとも、それなりのことが出来そうな気もします。NEC、富士通、日立から優秀なエンジニアを集めて、新しいスーパーコンピューターのアーキテクチャを設計する、なんていうことこそ(絶対に成功する保証はありませんが)、科学技術への投資でしょう。

